ストック社会の住宅事情


日本人の平均寿命は、戦後の間もない1950〜55年には64歳でしたが、今や男性80.50歳。女性86.83歳という長寿命に。(2014年データより)
したがって、生活に欠かせない住宅も人生の長寿命化に対応し、長年にわたって住み続けることが必要になっています。
長い人生では個人のライフスタイルも何度も変化し、その都度住宅事情も変わります。これに対応するのに今までのような住宅の建て替えも考えられますが、 これでは住宅取得に生活費が圧迫され一生涯厳しい生活になりがちです。
長い人生でそれなりに豊かな生活を送るには基盤となる日本の住宅もこれからは欧米と同じく建て替えでなく、住み替えも必要になります。


住宅流通市場全体に占める既存住宅の流通シェアは日本では≒14.7%(2013年データ)。 イギリス≒85% 、アメリカ≒90% 、フランス≒64%(2009年データ)に比べると格段に低いのが現状です。
これにはいくつかの要因がありますが、一つは住宅評価における築年数主義の慣行が上げられます。日本では土地と建物が一体となった価格構成で、住宅の評価は土地価格のみが重視され、建物部分の評価はなおざりにされてきた経緯があります。
そこで住宅を大切に長く使うという意識が希薄になり住宅の維持管理を軽視した結果、住宅の資産価値を下げて評価される市場が少なくなっていたということです。
つまり住生活のステップアップを図る手段としては、好条件の土地と新築主義に大きく依存していたということになりますが・・・。
しかし、経済情勢の変化によりこの土地評価も昔の土地神話的存在と異なってきました。 日本の市場もこれからは好条件の土地と維持管理された価値ある既存住宅への流通市場へと変わっていきます。


よく話題にあがる「団塊世代」。
この団塊世代を節目に日本の人口構成も変わってきています。
日本の人口は団塊世代の子世代いわゆる「団塊ジュニア」をピークに減少化へと転じ、将来的な人口構成では、働き盛りの世代が51%、高齢世代が41%、そして子供世代はわずか8%に(2040年予測)。
世帯構成も人口減少化と少子高齢化により様変わりしています。既に一般世帯数は減少、反面高齢者や晩婚化若年層の単身世帯は増加傾向。必要な住宅は適度なコンパクトなものに変わり、一般的な住宅のストック数は量的に充足し、余剰傾向になっています。
そして地域によっては高齢者ばかり、もしくは空き家の多いゴーストタウン化・スラム化した街に。
これらを解消するため「住み替え」を奨励する施策および住宅の資産価値が評価・活用される市場の環境整備が行われ、住宅事情は循環利用型社会に大きく変わって行きます。


日本の住宅政策は、これまで長きにわたり住宅の「量」の確保に主眼を置いて進められてきましたが、少子高齢化の急速な進行や環境問題の深刻化等の社会経済情勢の変化に伴い、住宅および居住環境の「質」の向上へと変わりつつあります。
これまでの「住宅を作っては壊す」から「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」に変わり、住宅を世代や家族を超えて社会全体の資産として活用していくというように変わっていきます。
しかし、これには「そのまま」という訳には行きません。住宅の「寿命と価値」は、その維持管理に大きく依存し、それなりの維持管理は不可欠です。


住生活基本法に基づく「住生活基本計画(全国計画)」。これまでも、また平成28年3月に新たに策定されたものも、既存住宅の流通と利活用を促進し住宅ストック活用型市場への転換を加速させることをポイントとしています。

【基本的施策】
●既存住宅が資産となる新たな住宅環境システムの構築のための施策の総合的実施
 ・インスペクション、住宅瑕疵保険等を活用した品質確保
 ・住宅性能表示、住宅履歴情報等を活用した消費者への情報提供の充実
●既存住宅の維持管理、リフォーム、空き家管理等の住宅ストックビジネスの活性化の推進
 ・住宅ストックビジネス例:定期メンテナンス、インスペクション、空き家管理、etc